4級審判資格取得顛末記

その2・集中力、持続力、忍耐力?
     受付で受講料を払い最新の「 サッカー競技規則」をもらって、Kさんと仲良く席に着く。
     要はこの「 サッカー競技規則」に沿って講義が進められ、試験の出題も基本的にこの本の中から出される。
     9時45分頃から講義が始まり、休憩とお昼休みを挟んで午後2時くらいまで続けられた。
     講師は神奈川県サッカー協会の方で、具体的な事例を挙げながら、ルールと審判の心得や対応の仕方を説明してくれる。結構分かりやすい講義だった。
     そもそも名称は「4級審判員資格取得講習会」であり、「講習会」であって「試験」ではない。
     講習会で講義した内容をきちんと理解しているかどうか確認の意味で筆記試験がある。
     併せて、一定の体力が必要ということで1500メートルを7分30秒で走る体力テストがある。
     だから、よほどのことがなければ不合格になることはないというのが、先に受けた先輩達からの助言だった。
     ただ、たまに不合格者が出るらしいので、高をくくっていると極まれな方のグループにはいってしまうらしい。油断はできない。
     久しぶりに講義を3時間以上聴いて、さすがに疲れてきた。どうでもいいから早く終わらないかなという気分になる。
     40歳を過ぎると、知力、体力だけでなく、集中力も持続力も減退してしまうようだ。
     忍耐力だけは我が奥さんのおかげで自信はあるのだが、ここではあまり役に立たない。
     回りの人たちもそろそろ飽きてきたのか、居眠りする人もでてきた。
     午後2時を少し過ぎた頃、やっと講義が終わってとうとう筆記試験が始まる。
     それまでのだらけた雰囲気が一気に緊張した空気になった。
     試験時間は20分くらいだった。案外短い。最初はフィールドのラインやマークの名称、長さ、ボールの重さなどを記入する基本的な問題。これは先輩方からも必ず出るときいていたので、完璧に出来たはずだ。いわゆる丸暗記してればいいので、通勤電 車のなかでボソボソつぶやきながら覚えた。
     だが、次の設問を見て愕然とした。「穴埋め式」ではないか。最初の問題以外は「選択式」か「○×式」の設問だと思っていたので、これは予想外だった。
     内容は退場処分になるケースの反則の項目で「(  )不正な(  )をした……」のように( )のなかを埋めていく問題が20問くらい続いている。
     (ついさっき見たばかりだな)と思うのだが、10分前のことは遠い過去の出来事として忘れ去ってしまう記憶力ではとてもじゃないが覚えていない。
     (「あなた、いっつも私の話聞いてないじゃない!」「いや、聞いてるよ。忘れちゃっただけだよ」といつも言い訳してるが、これは言い訳じゃなくて事実なんだよ〜〜失礼、また話がこっちに転んでしまった)。
     それでも何とかいくつかの用語は思い出したのだが、今度は漢字が書けない。
    (「ぶじょくてき」ん〜、どんな漢字だったっけ)と必死に考えていると、背後から
     「すいません。ひらがなで答え書いてもいいですか?」と質問が飛ぶ。
     「ええ、構いませんよ。自信がなければ、ひらがなでもいいですよ」と講師が答える。
     (ああ、助かった)「ぶじょくてき」とひらがなで答えを書いたが、ちょっと屈辱的な気分になってしまった。
     息子の漢字テストの点数にショックを受けることが度々あるが、原因は私のDNAだったとその時わかった。
     (悪かったな息子よ、これから点数悪くても拳骨しないから)。
     その後は、オフサイドに関する○×式の問題、それから……(すみません、1カ月くらいたってしまったのでもう完全に忘れてしまいました。)
     筆記試験は100点満点の80点が合格ライン。
     「79点でもだめでですからね」と事前に結構しつこく講師が言っていたので、答案が回収される時は正直とても不安だった。
     たぶん穴埋め式問題は20問中半分くらいしかできていない。
     1問2点とすると、それだけで20点すでに使い切っている。後がない。家に帰れない。
     隣のKさんに「どうでした」と聞くと「いやー、やばいっすよ」と、さすがにKさんも、ちょっと顔が青ざめていた。
     確かにここで落ちたらシャレにならない。実はこの1週間後には、久本主催のカップ戦を開催することになっており、私とKさんは、副審として旗を振ることになっているのである。
     が、気落ちしていてはいけない、これから体力テストがある。私もKさんも気持ちを入れ替えて、体力テストが行われる等々力競技場に向かった。(その3・「年寄り組」と「若者組」へ続く)

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